修了生の声

駒田 淳(経営学プログラム(MBA)修了)

公益財団法人 日本スポーツ協会イノベーション推進室 係長

スポーツ一辺倒の人間でも経営を語れるようになるために

社会人になって10年が経とうとしていた時、就職前に大学、大学院で得た知識や独学で得た知識に頼りながら仕事をすることに限界を覚え、次の10年間を見据えて更なるインプットが必要だと考えるようになりました。そのような中でMBAを目指したきっかけは、スポーツ界で働いている中で、国内スポーツ団体の経営基盤の脆弱さが指摘されるようになり、その解決策として民間企業で働く経営人材を外部登用する動きがありました。経営人材の外部登用に反対するわけではありませんが、「スポーツ界の人間に経営はできない」と言われているようで悔しい思いをしていました。そこで、経営学の知識を体系的に理解する必要があると考え、MBAを目指すこととしました。入学当初は経営学のイロハのイも知らず、同級生との知識の差に愕然としました。しかしビジネススクールの授業は、先生による丁寧な座学と膨大な課題、共に学ぶ仲間とのグループディスカッションとのバランスが良く、経営学の基礎知識すら無かった私でも、修了することができました。

事象の背景にあるロジックを追求する好奇心と本質を捉える洞察力及び思考力

これまでは経営を改善した組織による取組、いわゆる表面的な事象しか見ておらず、その取組と結果の因果関係を捉える程度でした。修士論文を執筆する中で関係者にインタビューをして、そこで知り得た経営改善のための取組の詳細やそれに付随する行動が、意図していなかったとしても組織を変革する様々なロジックに沿ったものであったことが判明したり、その組織の業界・フィールド特有の取組を発見したりすることもありました。数多くの先行研究のレビューや主査の先生とのディスカッションをとおして、事象とロジックが繋がったときは何とも言えない快感であり、研究の楽しさを感じました(修士論文の執筆をとおして経験した苦労以上の研究の楽しさに取り憑かれ、博士課程に進学することとしました)。仕事や家庭とのバランスをとりながらの修士論文の執筆は大変でしたが、それを通して得た表面的な事象ではなく、その背景にあるロジックを追求する好奇心と本質を捉える洞察力及び思考力は、実務においても汎用性の高いスキルであり、MBA修了者として活かさなければならないスキルであると思います。

紺谷(森) 千穂(経営学プログラム(MBA)修了)

製薬会社ファーマコビジランス 本部勤務

❝経営学❞を仲間と語り合いたい

会社でのプロジェクト管理に試行錯誤する日々の中で、自分のビジネス知識が圧倒的に不足していることを痛感していました。そもそも私はアカデミアの研究職から民間に転職しましたので、一般的な会社勤めとしての社会人経験を年齢程には経験していません。自分の知識不足を補うべく独学で勉強していた時に『経営組織(金井壽宏著・日経文庫)』という本に出会い、自分が仕事で経験する様々な出来事が組織論で研究され、その結果、多くの理論が構築されていることを知りました。ビジネス全般を基礎から学び、経営学について議論したいという自分の目的を達成するためには、業種・職種や年齢を超えて多様なビジネスパーソンと出会えるMBAが最適な場所であると考え、進学を決めました。

自分を客観的に見つめることの大切さ

私にとっての都立大ビジネススクールの2年間は、自分がいる環境で発生する様々な事象を、第三者的視点から捉えるための道具を揃えていく作業でした。その根本にあるのは物事に対して「なぜ?」という疑問を持つ事であって、ビジネススクールはそれに対する回答を自分だけでなく周りの人にもきちんと分かるように説明するスキルをトレーニングする場でありました。授業で出される課題はもとより修士論文の執筆にあたり、自分の考えを論理的に文章化する事が予想以上に困難であることに非常に驚きました。社会人になってから四万字を超える文章を書く機会はなかなか無く、そして書き終わった今も「もっと違うアプローチができたのでは無いか」と振り返る時もあります。しかしこの経験があったからこそ、現状に満足することなくより良いものを目指そうという向上心をこの先も持ち続けられると思っています。

本田 亮(経営学プログラム(MBA)修了)

富士通コネクティッドテクノロジーズ株式会社 サービスイノベーション事業部

自分の将来を具体化するラストチャンス

私は工学系の大学院を修了して大手電機メーカーに就職し、将来に不安を抱くことがないまま研究活動や製品開発に邁進してきました。しかし、市場は変化し事業構造も変えていかなければならない時代を迎えています。私自身も事業統合や分社化を経験し、新規事業創出や投資家視点での判断が現場に強く求められるようになってきたことに不安が募っていきました。また、ジョブ型雇用の導入や企業内高齢化の対応など人事制度や雇用制度も変えていかなければなりません。組織行動論や人的資源管理の知識を体系的に学び、自分自身をアップグレードしなければならないという想いが高まっていきました。加えて、年齢を重ねるにつれて公共活動や社会貢献を意識するようにもなっていきました。「自分の将来を具体化するラストチャンス」という決意をし、公立大学である東京都立大学大学院のビジネススクールの門を叩くことを決めました。

現実の課題に論理的に対処する実践力の養成

修士論文を書き終えて感じたことは、「修士論文の執筆は、問題を深く考え抜き、説得性のある理論を構築する訓練である」ということでした。振り返ると、当初の研究計画書で描いた課題は漠然としている一方で、近視眼的に結論を導こうとするアプローチが見え隠れしたものだったと思います。1年以上にわたる研究において、専門書や先行研究論文を読み込み、最新の調査データや統計データから事実を一つひとつ拾い上げ、事実から問いを掘り下げることによって、仮説を説明する理論のフレームワークを作っていくプロセスを学びました。ゼミでは「手がかりを見つけること」、「事実に潜む問いに気づくこと」を丁寧に指導いただきました。修士論文の事例インタビューのシナリオは理論を裏付けるための具体化された内容となりました。このプロセスは講義では得られないものです。実際のビジネスシーンでは不確実な事態への対応が求められます。修士論文の執筆では、学術的な意義に加えて現実の課題に論理的に対処する実践力が少なからずとも養われたと思います。

酒井 とし江(経営学プログラム(MBA)修了)

経営コンサルタント会社 代表

MBAという財産

私は以前、政府関係団体において、中小企業の海外販路開拓支援の担当者でした。しかし、様々な支援ツールを利用しても企業が実際に海外展開を成功させることは難しく、時間や資金を無駄に費やす企業も少なくありません。本当の支援は、海外展開という事業のプロセス上のパーツを成功させることではなく、事業を図る上で必要な力が備わっているかを見極めることから始めるべきと気づいたのですが、当時の私はそのための知識やスキルがなく適切なアドバイスができませんでした。その悔しさがMBAを目指すきっかけになりました。都立大大学院にご縁があったのは私にとって大変幸運であり、在学中は仕事との両立に苦労もありましたが、素晴らしい先生方から得た学びや知識は、この春起業した私の財産になりました。

学びの終わりではなく新たな始まりへ

修士論文は業務で関わった日本酒産業を題材にしました。担当先生からご指導頂く度に、自分の思い込みや未熟な部分を指摘され凹むこともありましたが、何とか書き上げることができました。執筆にあたり、先生からご教授頂いた内容は勿論のこと、経営者へのヒアリング、先人の研究論文や資料から得た知識と気づき、それらを体系的に結び付けるプロセス等は、今後の仕事の進め方に大変有意義になると思います。しかし、同時にまだまだ道の途中であると痛感しています。今回、MBAは私の人生のターニングポイントになりましたが、「学び」はこれで終わりではなく、学び続けることが新たにスタートした自分にとってのミッションであると考えます。