経営学研究科について

専攻長挨拶

「学び」と「思索」に深化を

東京都立大学大学院 経営学研究科
経営学専攻長
松岡 多利思

松岡 多利思

論語の「為政篇」に、次のような言葉があります。

「学びて思わざれば、すなわち罔(くら)し。思いて学ばざれば、すなわち殆(あやう)し。」

この短い言葉は、学問の本質を鋭く突いています。すなわち、ただ学ぶだけで考えなければ真理を見失い、逆に考えるばかりで学ばなければ、独断的で誤った道に進んでしまう、という意味です。学問における「学び」と「思索」の両輪の重要性を説いた教えです。

大学院は、まさにこの「学び」と「思索」を深める場に他なりません。インターネットから容易に情報が手に入り、AIが人々の疑問に即座に答えるようになった現代においては、表層的な知識だけではもはや通用しないでしょう。今、私たちに求められているのは、単なる教養や手軽な知識ではなく高度な専門性と、自ら課題を発見し、解決へ導く思考力・分析力です。そのためには、自らの問いに誠実に向き合い、専門知識を習得し、思索を重ねる鍛錬が欠かせません。

東京都立大学大学院 経営学研究科 経営学専攻では、博士前期課程として3つのプログラム、経営学プログラム(Master of Business Administration)、経済学プログラム(Master of Economics)、ファイナンスプログラム(Master of Finance)を開設しています。これらのプログラムでは、経営学・経済学・ファイナンスの最先端の知識を体系的に学び、高度な専門性と思考力を養うことを目的としています。

入学定員50名に対し、ほぼ同数の教授・准教授(特任教授含む)が在籍し、徹底した少人数制指導を行っている点も、本専攻の大きな特長です。すべてのプログラムにおいて修士論文または課題研究論文の執筆が修了要件となっており、その過程において、まさに「学び」と「思索」の深化が求められます。

また、本専攻は博士後期課程も有しており、経営学・経済学・ファイナンスの各分野において、さらに高度な研究を行うことが可能です。日本において博士号取得者の割合が依然として低い中、近年では大学研究者に限らず、ビジネスパーソンや官公庁職員にとっても博士号取得の意義と必要性が高まっています。本専攻では、国際的な学術誌に高水準の研究成果を発表している教授陣のもとで研究に取り組み、博士論文の完成と学位取得を目指すことができます。

博士前期・後期課程ともに、社会人の方々が学びやすい環境を整えており、主に丸の内サテライトキャンパスにて、平日夜間および土曜日に授業・研究指導を行っています。これまでにも多くの方々が本専攻を修了されました。

熱意ある皆さんと、この専攻で共に学び、共に成長できる日を心より楽しみにしています。

経営学研究科のコンセプト

首都東京には、我が国を支える主要な大小の企業が集積し、新しい企業を創業していく潜在力があります。それを現実の活力に転換するためには、マネジメントのあり方を探求する第一線の研究者と、組織を動かす高度な能力を有する経営管理者・起業家の養成が欠かせません。

また、経済のグローバル化やインターネットの発達、環境への配慮などにより経済活動の仕組みも日々変化する中で、ビッグデータの蓄積とともに高度な経済学やファイナンスの専門的知識を用いた経済分析や資産運用・資金調達・金融リスク管理が求められています。

経営学研究科では、これらの社会的要請に応えるために高度な研究水準を維持し、その成果を博士前期課程および博士後期課程において学術的もしくは実践的な教育に反映させていきます。特に、博士前期課程では経営学・経済学・ファイナンスの各分野に教育プログラムを設置します。

専攻紹介

経営学専攻 経営学プログラム(MBA, Master of Business Administration)

「経営学プログラム(MBA)」では、東京都の産業育成、経済の活性化に貢献することによって、国家レベルの産業競争力を強化・発展させていく人材を養成します。すなわち、戦略的な思考能力と高度な経営管理に関する知識を有し国際的に活躍できる高度専門職業人と、経営学の諸理論を修得し新しい経営学を切り開いていける研究者を養成します。また、いわゆる文系の人材だけでなく、大学の学部で経営学・経済学を学ばなかった理工学系出身の社会人学生を積極的に受け入れ、そのキャリア開発と新産業・新事業の育成に積極的にかかわっています。

授業は、平成28年度に新設された丸の内サテライトキャンパスで平日の夜間と土曜日に開講されます。

経営学専攻 経済学プログラム(MEc, Master of Economics)

「経済学プログラム(MEc)」では、経済学に関する専門的な知識を有し、学術的あるいは実務的な課題について幅広い視野を持って研究を遂行できる能力を持った研究者および実務家を養成します。官公庁・シンクタンク・企業等において、経済活動の分析、経済政策の立案、企業の効率的な活動の提言を行うための知識・手法および課題への取り組み方を修得する他、経済学の諸理論を応用し、経済システムや経済社会の事象をグローバルな視点で歴史的な経緯も含めて資料を分析し、高度な歴史的知見の提供や問題解決のための政策提言を行う能力を身につけさせることを目標とします。

コア科目と呼ばれる、マクロ経済学・ミクロ経済学・計量経済学の高度な基幹理論の学修には数学・統計学が不可欠ですので、大学の学部で経営学・経済学を学ばなかった理工学系出身であっても経済学に関心を抱く社会人学生を積極的に受け入れます。

授業は、平成28年度に新設された丸の内サテライトキャンパスで平日の夜間と土曜日に開講されます。

経営学専攻 ファイナンスプログラム(MF, Master of Finance)

「ファイナンスプログラム(MF)」では,世界的な金融センターで活躍できるファンド・マネジャー、クォンツ・アナリスト、金融リスク管理者、トレーダー、金融商品開発者、金融政策立案者、財務アナリスト,財務コンサルタント,および一般事業会社の財務責任者などの高度金融専門人材を養成します。高度金融専門人材とは,①金融機関や官公庁の中で,自らのアイデアにより、表現力のある数理モデルや投資戦略の構築、適切なリスク管理技術の開発、金融商品の開発やその定量的な評価・分析、バックテストなどを行える人材,あるいは②一般事業会社の財務管理に関連する部署や経営層およびプロフェッショナルファームなどで,市場の期待と事業リスクを定量的に評価・分析できる知識とスキルを持ち,適切な財務戦略や経営戦略を立案・実行し,企業価値の向上に貢献できる人材であると考えています。

金融機関等での実務経験のある実務家、金融機関への就職を希望する四年制大学卒業生、一般事業会社で働く実務家やM&A,グループ経営,事業リスクマネジメントなどに携わるCFOなどのキャリアを志望する実務家を対象に、2016年度に新設された丸の内サテライトキャンパスで、主に平日の夜間と土曜日に授業を行います。