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非伝統的安全保障

みなさんこんにちは!宮本ゼミ3期生です。今回のゼミでは安全保障班の発表がありました。

みなさんは「安全保障」と聞くと何が思い浮かぶでしょうか?多くの人が軍事的なものを想像すると思います。

現在、非軍事的なものから国の安全を守る非伝統的安全保障が注目されています。

安全保障班では、非伝統的安全保障としてエネルギー、海賊、文化、食糧、サイバー・宇宙についてとりあげました。以下、それぞれについて簡単に述べたいと思います。

エネルギー

日本のエネルギー自給率は低く、12.1%です。日本の電力供給の多くを担っている石油は少数の国から輸入しています。仮にその国々の情勢によって石油が輸入されなくなったら日本の電力供給はどうなってしまうのでしょうか?そのような事態にならないよう、日本のエネルギー自給率を高めるために再生可能エネルギーの導入を進めたり、原油調達先である中東諸国との関係を強める必要があり、日本は現在実行中です。

海賊

世界に多くの国際犯罪がありますが、ここでは海賊をとりあげます。ソマリア沖、アデン湾には海賊が多いです。この地域は日本から遠いため、関係のないことのように思うかもしれませんが、この地域はアジアとヨーロッパを結ぶ海上輸送の大動脈であり、日本にとって重要な地域です。自衛隊など各国の部隊によって、海賊等発生時案件数は多くはありませんが、海賊が生まれる根本的な原因は解決していない状況です。

文化

「文化の安全保障」というと想像がつきにくいかもしれません。文化とは社会集団に特有のもので、芸術や文学のみならず、生活様式や価値観など広範囲にわたるものを指します。文化は時として衝突します。例えば政治利用です。文化を取り扱っている国際機関のユネスコには「世界の記憶事業」というものがあります。これに各国や各団体が残すべき歴史を登録するのですが、中には南京事件や慰安婦問題など双方で意見の異なる歴史が申請されることもあります。こうした歴史の衝突が国際機関で行われることが文化の衝突であるとの指摘があります。

それでは文化の安全保障のためにはどうすればよいのでしょうか?そのためにはお互いの文化を知ること、アイデンティティや多元主義などが挙げられます。さまざまな視点に立って物事を考える。これが文化の安全保障につながりそうですね。

食糧

2019年における日本の食糧自給率はカロリーベースで38%となっています。日本の農林水産省は「予想できない要因によって食料の供給が影響を受けるような場合のために、食料供給を確保するための対策や、その機動的な発動のあり方を検討し、いざというときのために日ごろから準備をしておくこと」を食糧安全保障として定義しています。それでは食糧安全保障が失敗するとどうなるのでしょうか。その例として飢饉が挙げられます。飢饉は干ばつによっても引き起こされますが、深刻なものは経済政策によるものだそうです。最近の例から見るとマックのポテトが足りなくなったりウクライナ戦争による小麦の価格上昇が挙げられます。

それではこうした食糧安全保障において日本はどのようなことができるのでしょうか。例えば農業に規模の経済が効く仕組みを作ることや農地面積を増加させることが挙げられます。私たちにとって身近な食も安全保障の一部を担っていることを意識しなければなりません。

宇宙・サイバー

みなさんは日頃からマップやGPS機能などを使っていると思います。これは宇宙空間への依存度が非常に高いことを示しています。近年では宇宙空間が混雑化しており、衛星の数やスペースデブリ(宇宙ゴミ)が増加しています。こうした宇宙空間の混雑化によって衛星と衝突する危険性が高まります。さらに宇宙空間において、他国の衛星に脅威を与える技術の開発も進んでいます。こうした宇宙空間での安全確保のために宇宙状況監視の強化が必須になっています。日本では宇宙作戦隊と言われるものが発足したようです。
また、サイバーにおいても安全性の強化が必須です。不審アクセスの件数は年々増加しており、そのほとんどのものの送信元が海外となっています。

こうした宇宙・サイバーの安全保障は比較的新しい領域です。しかしインターネットの利用がどんどん高まる現代において宇宙・サイバーの安全保障はより重要なものとなっていくでしょう。みなさんもぜひ注目してみてください。

ここまでさまざまな非伝統的安全保障を紹介してきました。しかしこれらは全て相互に関わり合っています。独立したものとして考えず、こうした安全保障の相互関係によって私たちの平和と安全が保たれていることをぜひ意識してみてください。

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