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理論の大切さ

皆さん、こんにちは。宮本ゼミの都築です。

宮本ゼミでは後期から、教養・経済・政治の3グループに分かれてサブゼミをしています。今回は私の所属する経済グループについて紹介させていただきます。

経済グループでは『マンキュー マクロ経済学Ⅱ 応用編』を輪読する形式でサブゼミを進めており、今回は「ソロー・モデル」を扱いました。

皆さんは、ソロー・モデルがどのようなモデルかご存じでしょうか?

ソロー・モデルは経済成長を説明する強力な理論モデルです。このモデルを用いることで「なぜ日本が第二次世界大戦後の焼け野原から奇跡と呼ばれた復興ができたか」や「なぜ先進国と途上国で所得格差があるか」などを理解することが可能となります。

ソロー・モデルによると、経済の産出水準と成長に影響を与える重要な要素は貯蓄(資本ストック)・人口成長・技術進歩です。

経済の産出量(GDP)は資本ストックの量に応じて増加しますが、資本ストックの増加に伴い、経済成長は徐々にそのスピードが低下します。これは、経済に「定常状態」と呼ばれる長期の均衡が存在すると考えられているからです。

戦後直後の日本は戦争によって建物などの資本ストックが破壊され限りなくゼロの状態でした。その後、政府の投資などによってインフラが整えられ、1960年代には高度経済成長期を経験し、一人当たり産出量は年率8.0%(1946~1972年)という驚異的な成長を遂げました。日本の戦後復興は奇跡ととられがちですが、資本ストックが少ない経済のもとでは急激な成長を遂げるという事実はソロー・モデルを用いて分析すると必然とも言えます。

ソロー・モデルが優れているのは、定常状態に至るまでの理論だけでなく、定常状態からどのように成長するのかを説明している点です。それが、人口成長と技術進歩です。人口が一定率で成長すると人口成長がない経済に比べて、より多くの労働者が働くことができ、総産出を増やすことができます。その一方で、人口成長率の上昇によって、労働者一人当たり資本の定常状態水準が減少するという側面もあります。中国の一人っ子政策やアフリカで世界銀行などが行っている家族計画は、人口成長率を下げ、長期的に一人当たり所得を増加させるという効果があります。
ソロー・モデルによると、長期における経済成長のカギは技術進歩です。技術進歩は定常状態において多くの変数を同時に上昇させることができるという特徴もあります。また、技術進歩を考慮することで、一人当たり所得の国際格差についても興味深い分析ができるようになります。所得の国際格差の要因は、要素の蓄積(道具を持っているか)と生産の効率性(うまく使いこなせるか)によって決まり、実際にこの両者には正の相関があるという実証研究があります。

国際所得の格差と関連して、「なぜ発展途上国が貧困から抜け出せず貧しいままなのか」という問いがありますが、私たちはこの要因として汚職があると考えています。実際に、世界の汚職指数を世界地図に落とし込むと、サブサハラなど貧困に苦しんでいる国は指数がかなり低くなっています。政府が汚職を行うことによって、資本の蓄積や効率性を向上させるインセンティブを阻害しているのではないかという考え方です。

ここでの学びはタイトルにある通り、「理論の大切さ」です。理論は「難しい」、「役に立たない」といったイメージを抱きがちですが、理論をきちんと学ぶことによって、汎用性のある議論をすることができるようになります。数式やグラフの意味をきちんと考えながら追っていくことで、様々な政策に応用でき、政府が行う経済政策について、これまでとは別の視点で考えられることを実感しました。これを読んで少しでも「理論って意外と使えるんだな」と思っていただければ幸いです。

大変長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました! 質問は宮本ゼミのインスタグラム(tmu.miyamoto.group)で受け付けています!!

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