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トイレなきマンション

皆さん、こんにちは。宮本ゼミ3年の山口です。

世界には解決しなければならない課題が無数に存在しています。宮本ゼミでは、各メンバーが関心を持った課題を取り上げ、議論を通してその解決策を模索しています。

今回は、私が先日のゼミで取り上げた「原子力発電と核のゴミ」を紹介させていただきます。

「原子力発電」と聞いて、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべますか?

福島第一原子力発電所の事故の記憶から、「危険」、「不安」というネガティブなイメージを持たれる方、もしくは発電コストが安価で、CO2を排出しない「クリーンなエネルギー」というポジティブな捉え方をされる方など、原子力発電への印象は様々だと思います。

はたして本当に原子力発電は「クリーンなエネルギー」なのでしょうか。

確かに、原子力発電は火力発電と違い発電の際にCO2を排出しません。また他の発電方法と比較すると、発電の際にかかる費用は安価です。そして、クリーンなエネルギーといわれる理由の一つとして、燃料の約95%をリサイクルできる点が挙げられます。使用済燃料は、青森県六ヶ所村にある再処理工場で処理を行うことで、何度も燃料として利用できます。しかし、これは今後の予定です。実際には再処理工場は未完成で、使用済燃料は全て保管されています。

そして最大の問題は残りの5%、「核のゴミ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物の処理です。リサイクルができない廃液はガラスと共に融解・固化させ「ガラス固化体」となります。これは極めて強い放射能を有し、その側に人間が立つと約20秒で致死量の放射線を浴びるという凄まじい物体です。安全なレベルになるまで何万、何十万年という気が遠くなる歳月、隔離する必要があると言われています。

では、その非常に危険な物体はどのように処理するのでしょうか。答えは「まだ決まっていない」のです。

宇宙処分や海底処分など様々な方法が世界的に検討され、最終的に地下300mの地盤に埋める「地層処分」が最も現実的であるという結論に至りました。日本もその方法を採択しましたが、どこの地下に埋めるかは決まっていません。現在進行形で候補地が検討され、調査を受け入れることを表明した自治体がありますが、その地域に住む住民の暮らしはどうなるのでしょうか。また、その処分方法は本当に安全なのでしょうか。このように、放射性廃棄物の処分方法が明確化されていない現状は「トイレなきマンション」と表現されています。

日本は唯一の被爆国であり、原発事故を経験している数少ない国です。その危険性を肌で知っているにも関わらず、政府は原発を推進していく姿勢をとっています。福島第一原子力発電所での事故から10年目を迎えようとしている今、今後の原子力発電の利用について改めて国民で議論する必要があるのではないでしょうか。

私たちは、このような重大な問題に対して議論を重ねることで、世界にインパクトを与える人材になるための能力を日々養っています。活動に興味のある方はInstagram(tmu.miyamoto.group)までお気軽にお問い合わせ下さい。

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